Japanese trap - 日本語の行方

~ posterity of everything ~ 過剰における衰退

私たちの根底に横たわるアンビエントとチル

トリップホップ、ヒップホップ、ゴス、ウイッチハウス、トラップ、クラウドラップ、グリッチ、サイケ、ダウンテンポ、ウイッチトリル、チルウエーヴ、チルステップ、グローファイ、ホラーコア、トリルウエーヴ、ドローン、エテリアル(ethereal)、ウイッカ(WICCA)・・・

 

近年倍増する勢いで細分化されていく音楽のサブジャンル。これは今まで対極にあると思われていたジャンル同士の融合を実現し、カテゴリーの壁は突破され、今や完全なジャンルレス時代の到来といえる。

先日読んだアダム・ハーパーの「オンライン・アンダーグラウンド」に関する翻訳記事にて”オンラインアンダーグランドは新たなパンクでヴェイパーウエイヴは時代の繰り返しでもある”と分析している。

自分個人の意見として、繰り返されるパンク、ヴェイパーウエイヴ、これらカテゴリーの突破現象には更にアンビエント、チルというコンセプトが根底に大きく横たわっていると加えたい。

Vaporwaveの語源は未発売に終わったソフトウエアVaporwareが語源であると言われているが、個人的には蒸気という意味のvaporの部分に囚われてしまう。何故ならばこれらカテゴリーの突破を積極的に推し進めてきた世代の共通点としてアンビエントサンドを自分の表現文法として身体化し、独特のパッドサウンドが彼らの身体から浮遊離脱したエーテル体を表している様だからである。まさに蒸気と化した彼らの意識はジャンルレスに様々なビート感を浮遊しクラウド上で他者のアンビエントテクスチャーと戯れる。もう一つ蒸気という意味での彼らのアンビエント感は、この世代特有の絶望感と現実に対する感覚がまるで全員がコタール症候群に陥ってしまったかの様な「自分がすでに死んでいる」という感覚が共通点として感じられる。彼らの世界観を表すキーワードとしてghost, ethereal, sanct, god, holy, death などこか崇高的で象徴性の高い言葉が多く挙げられる。近年の主要な音楽現象を見るとやはりアンビエント的なるものを抜きには語れない気がする。

 

ブライアン・イーノが提唱したアンビエントミュージックとポストパンクが現れるのは双方ともに70年代後半と時期が同じである。その後、1990年にKLFのアルバムChill Outでよりシーンに根付いた処からのアンビエント、チルの拡散が始まる。ネット社会の成熟化、そして2000年代のポストパンク・リバイバル、これらがどの様に今のデジタルネイティブ世代の文法としてまで辿り着くのか詳しい経緯は追いきれない。しかしパンク的なるものとアンビエント的なるものはどこか似たような作用を精神面に、社会的に及ぼしている様に強く感じる。

 

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